6252(2B52)超三アンプ

久しぶりに真空管アンプらしい真空管アンプを作った気がする。




6252(2B52)は双四極管の送信管で、この仲間の中では一番小さい奴です。829B(3E29)などはオークションでよく見かけますが、Amperexというメーカーの6252が偶然手に入ったので、それを使用します。
一番小さい奴とはいえ送信管なだけあって、最大プレート電圧600V、プレート損失10W×2となかなか。ある程度の電圧はかけてやる必要がありますが、定格からすると控えめな動作点で設定します。
トランスは山水で揃えました。整流管はガス封入整流管のCK1006を使用。ガス封入なので、妖しい光を発します。





これは中身。どうして俺の作るアンプは、いつも中身ごちゃごちゃなのか・・・。




電源周りの回路図。整流管のCK1006は予熱しないと電源投入時にアークが不安定になると言われていますが、それはラッシュカレントのせいです。つまり、CK1006は冷陰極管としても動作できる真空管であり、流れる電流が大きい場合はフィラメントが加熱されていなくても電流を流せます。ただし、それだけではカソードの電子放出が不十分で、必要ならばフィラメントに通電して熱電子も併用するという真空管です。
そのため電源投入時には、電源投入->ラッシュカレントで大電流が流れる->冷陰極管として動作し、放電が開始->コンデンサがある程度充電されて、大電流が流れなくなる->放電が停止->フィラメントが熱せられ、熱電子の放出が始まる->再び放電が開始する
というプロセスを取り、それがアークが不安定に見える原因です。
そこでこのアンプでは、整流直後には10μFと少なめなコンデンサを入れ、その後にMOS-FETのフィルターを入れる事でラッシュカレントを防止しています。330KΩと1μFがローパスフィルタを形成し、1μFの充電時間分だけ、ラッシュカレントが抑制される仕組みです。ツェナーは電源OFF時1μFの放電のため。CK1006由来のノイズもカットされるので一石二鳥。直熱でも傍熱でも、熱電子のみを使用する整流管であれば、フィラメント(ヒーター)が加熱されて行くに従って徐々に電子の放出が増えてゆくので、ある程度ラッシュカレントは抑制されますが、冷陰極管としても動作できるという事は、シリコンダイオードと同じでラッシュカレントを抑制するものがありません。なにぶん古い時代の真空管なので、現代のアンプで使用するような、数百μFなどという巨大なコンデンサを使用する事は想定されていないのでしょう。CK1006の寿命に関する問題も、ラッシュカレントの問題が影響していると思います。古い真空管を使うのは何かとめんどくさいものです(もっとも真空管自体も古い素子で、何かとめんどくさいものではありますが)。




回路自体は取り立てて説明するほどのものでもない、超三結合V1プッシュプルです。6252(2B52)はカソードとG2が共通の双四極管なので、プッシュプルしか選択肢がありません。
当初はNFBを多用して、思いっきり特性にこだわったハイブリッドアンプを作ろうと思ってましたが、それなら半導体アンプでいいじゃんと思い直し、癖がありつつその癖を楽しむ事の出来る回路を思い浮かべたとき、真っ先に出てきたのが超三回路でした。





6252(2B52)もCK1006もよく光る。


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